「美陽、おはよう!」

「ごきげんよう。どうしたの、朝からやけに元気じゃない」


翌朝、自分の席にリュックを置くのもそこそこに、私は息せき切って美陽の座る席へと駆け寄った。

そう、彼女の言う通り、私は今とても気分が良い。


もちろんその理由は、

「昨日の夜ね、また泥棒さんが出て来る夢を見たの!凄くない?」

昨夜見た、心温まる夢の内容にあった。



何せ、硬い床の上で起床しても尚あの泥棒の事を覚えていた私は、これは絶対に良い事が起こるに違いないと確固たる確信を抱いたんだ。

あれ程身体に空いた穴からも出血は止まっていたし、強く触らない限りは痛みも感じない。

もちろん朝は父にも会わなかったし、岳と登校する時もいつもより笑顔になれた気がする。


だからこそ、それもこれも全部、あの夢のおかげだと思わずにはいられなかった。



「あら、例の悪党の夢?続けざまに同じ夢を見るなんて、そうそうない事じゃないかしら」


興奮気味な私の言葉を聞いた美陽は、手鏡を持っていた手を下ろして私の方を向いた。

くるりと上がったまつ毛、目の周りに光るラメ、薄く引かれた紅色のリップ。

ナチュラルメイクが彼女の美貌を引き立たせていて、今更ながら、私はとても格の高い人と中を深めたんだな、なんて実感した。