手を伸ばせば、瑠璃色の月

まだ、岳は中学一年生なのに。

若い頃からこんな弊害と闘っているのなら、成人した頃にはどうなってしまうのだろう。


言い終わる傍から、涙で視界が滲んだ。


「だから、私が何とかしなきゃいけないんです。他の人に迷惑をかけちゃいけないから、私が、全部…」


私が、全部背負わないといけない。

父から放出される黒を吸い込んで、自分の中から溢れそうになるそれを閉じ込めて。

人の迷惑になることはせず、母と弟が笑える日々を少しでも守れるように。


私が、私だけが耐えれば、大丈夫なんだ。



「……それ、おかしいだろ」


でも、泥棒さんが放ったのは私の考えを全否定する言葉だった。


いや、俺がどこまで口出ししていいか分かんねぇけど。

そうやって前置きをした彼は、あの碧眼で私と目を合わせた。


「お前さ、このまま他人の為に人生使うつもり?自分の人生だろ、自分の為に行動したって良いんじゃねえの」

「……」


泥棒さんの声は私のものよりも小さいのに、妙な輝きを放って頭の中を駆け巡った。


「別に、お前がそのままでいいんなら構わねぇけど。…でも、もっと自分の事も大切にしろよ。他人に振り回されんな」


それはまるで、私の中に溜まった黒を取り除く瑠璃色の魔法。

どこか投げやりにも聞こえるその言葉には、私が誰からも与えられる事のなかった温かさが含まれていた。