手を伸ばせば、瑠璃色の月

「えっ、と…」


泥棒さんの瞳に心の奥深くまで見られているような気がして、堪らずに顔を背けた。


「自分でその決断をしたって事は、何かしらの理由があるって事だろ」


それなのに、彼の声はすんなりと心に響いてくるのだから不思議だ。



「お前の内なる声を聴いてみろ。何て言ってる?」


内なる、声…?

口の中でその言葉を転がして、眉をひそめる。


何それ、どういう意味だろう。

泥棒さんの紡ぐ言葉が難しいのか、それとも私の持つ語彙力が足りないのか。


どちらにせよ、この場に相応しい回答なんて思い付かなくて。


泥棒さんはそれ以上語る事なく、じっと私の回答を待っている。



「…弟を、守りたいからです」


結局、吐息の中に混じった答えは、いつも自分を正当化する為に言い聞かせているものだった。


「“弟を守りたい”?」


私の目の前に座る彼は、理解が追いつかないと言いたげにフードの上から頭を掻いた。



「この家では、弟だけが唯一大きな被害を受けていないんです。…将来父の会社を継ぐから、私達よりは怒られる頻度も少なくて」


でも、事はもう取り返しがつかない所まで進んでしまっていた。


「弟は、…岳は、父のせいで大きな音が苦手になったんです。耳を塞いで蹲って、そこから動けなくなるくらい…」