手を伸ばせば、瑠璃色の月



それから、私は物音にかき消されてしまいそうな程の声量で全てを説明した。


幼少期から、母が父の“モラハラ”と呼ばれる精神的な暴力に苦しめられていたこと。

私の家だけの特殊な決まりごと…束縛のせいで、部活動にも入れていないこと。

母は父と離婚せずに、父の愚痴を私や弟に言い続けていること。

年が経つにつれて父の暴言は実の子供達にも及び、私達姉弟には様々な弊害が現れていること。


泥棒さんに向かって言葉を紡ぐにつれ、彼の目元がどんどん険しくなっていくのが暗がりでも見て取れた。



「…お前、それ、警察か頼れる人に相談した?」


そして、私の話に一言も口を挟まずに聞いていた泥棒さんが発したのはたった一つの疑問。


「…いいえ」

「お前自身はこの状況を何とかしたいと思ってるけど、誰にも相談してない。要はそういう事だろ?」

「…はい」


私の舌足らずな説明でここまで解釈してくれた事に感謝しながら、こくりと頷くと。



「何で?」


予想もしていなかった質問が、彼の口から飛び出した。


「何で、…?」


ずっと一方的に話していたから質問に上手く答えられなくて、思わず口ごもる。

それに気付いているはずなのに、泥棒さんは、

「何で?」

と、再び答えを求めてきた。