手を伸ばせば、瑠璃色の月

一瞬、武器を持っていないかと身構えたけれど、私の事を抱き締めてくれた人がそんな危険物を持っているわけがない。

涙を拭いた私は、震える手で盗難品を受け取った。


私のネックレスは、ひんやりとした感触を手に残した。



「…お前、あの父親とどういう関係なんだよ」


私がそれを受け取ったのを確認した泥棒さんは、腕組みをして単刀直入に尋ねてきた。


…いきなり、何を言えばいいって言うの。

夜の闇の黒と、海そのものの碧に染まった瞳を真っ直ぐに向けられ、たじろいでしまう。


でも、先程も考えたようにこれは夢だ。

夢の中の住人に全てを話したところで、現実世界には何の影響もないはず。


…それに、これが夢とか現実とかいう問題以前に、

誰かにこの気持ちをさらけ出さないと、自分の中の黒が溢れて取り返しのつかない事になってしまいそうで。


「…あの」


ごくりと唾を飲み込んだ私は、別室に居るであろう家族に聞こえないように小さな声を出した。



「…私の家では、父が絶対なんです。…父が、全てのルールなんです」



私の言葉を一言も聞き漏らさないと言いたげに、泥棒さんが身を乗り出したのが分かった。