手を伸ばせば、瑠璃色の月

「…辛かったな」


彼の囁きが聞こえた次の瞬間、

私は、大きくて逞しい腕の中に包み込まれていた。


それはまるで、私の身体に空いた数え切れない程の穴を塞ぐかのように。


泥棒さんが私を抱き締めているのだと自覚するまでに、そう時間は掛からなかった。


ああ、これ程までに私の心情に寄り添ってくれた人は初めて。

…そうだ、私はずっと辛かったんだ。


頭の中では夢だと分かっていても、彼から伝わる温もりは心の臓から冷え切っていた私を溶かしてしまいそうで、

言葉では言い表せない程の深い安心感だけは真実であって欲しいと、嗚咽を堪えながら願ったんだ。







「落ち着いたか?」


それから、どのくらいの時間が経ったのだろう。

静かに涙を流していた私は、少し落ち着いてきたタイミングでゆっくりと顔を上げた。


途端に、泥棒さんの澄んだ碧色と視線がぶつかる。

彼の瞳は、私の気持ちに寄り添うかのように小刻みに揺れていた。


「…いきなりごめんな。でも」


一応自分の立場をわきまえているのか、泥棒さんはすぐに私から距離をとって座り直した。


「これ、返すから…だから、教えて欲しい」


泥棒さんがこちらに差し出した真っ黒な手が握り締めているのは、私のネックレス。


「……」