手を伸ばせば、瑠璃色の月

「…!?」


泥棒さんが息を飲んだ音が、はっきりと鼓膜を震わせた。


…ああ駄目だ、泣いてしまいそう。

画鋲について触れただけで、鼻の奥がツンとしてくるのを感じる。

全て自分が悪いと分かっているからこそ、自分の無力さがひしひしと実感出来てしまう。


私は、それ以上話す事すら叶わずに再度背中を丸めて蹲った。



自分を護るように抱き締めた両手は、一枚の布越しにいくつもの小さな丸い傷に触れた。

自分の中にある真っ黒な感情が、傷越しに見え隠れしている。

救いようのない闇に溺れて、息が出来ない。


…まるで、画鋲が刺さり過ぎて穴の空いた壁みたいだ。

その姿勢のまま、全く笑えない冗談を考えてしまった時だった。



「…お前、父親と何があったんだよ」


窓際に居たはずの泥棒さんの声が耳元で聞こえて。


え、と思ったのも束の間、

「怖かったろ…?」

手袋越しでも伝わる確かな温もりが、私の肩に触れたんだ。



「っ……」


もう、顔を上げて言葉を発する事すら出来なかった。


怖い、あんな悪魔みたいな奴、怖いに決まっている。

掠れた嗚咽を漏らしながら小刻みに頷く事が精一杯で、でも彼には全て伝わったみたいで。