手を伸ばせば、瑠璃色の月

その目は何かを探すかのように忙しなく動き、寝た痕跡のないベッドと床に敷かれたバスタオル、そして血の付着したパジャマへと注がれる。


「…?」


彼が何をしたいのかまるで分からず、ただ黙ってその一挙手一投足を見守っていると。


「…おい」


再び私と目を合わせた泥棒さんのマスク越しから、低くくぐもった声が聞こえた。


「その血、どうしたんだよ」


否、彼の目が捉えているのは血だらけのパジャマ。

顎でそれをしゃくってみせる彼に、私は言い淀んで小さく俯いた。


「あ、えっと、」


果たして、見ず知らずの泥棒にどこまで話せばいいものか。


泥棒さんの方を見上げる事も出来ないまま、悩んだ私が発した言葉は、

「…画鋲が、刺さってしまって」

“何故”“誰のせいで”を省いた、簡潔な文章だった。



…このままじゃ、私の不注意みたいに聞こえてしまうかな。

だけど本当は違うの、私のせいじゃないの。

泥棒さんの息遣いがはっきりと聞こえるこの空間で、私は静かに思いを巡らせる。


これは夢だし、父に怒られる事もないんだし…全部、言ってしまえ。

潤んだ目を瞬かせた私は、そっと息を吸った。


「お父さんに、張り倒されて、…それで、画鋲の上に倒れたんです」


何十本も、身体に刺さりました。

震える声で、そう告げた瞬間。