その後、私は処置をする為に母から救急道具を受け取った岳によって自室へと運び込まれた。


「これ、ピンセットで抜くね」


右半身と左手に刺さった画鋲は針が見えないほどに深く刺さっているものがほとんどで、手のひらから二の腕、ふくらはぎから足首に至るまで、様々なところから出血をしていた。

カーペットの上に座って腕と足を捲った私の傍に屈んだ岳が、まるで外科医の如き緊張感を滲ませながらピンセットを握り締める。


「抜くよ」


浅く刺さった画鋲は何とか自力で抜いてはいたものの、深い方の痛みに関しては比べ物にもならなかった。


「痛っ…!」


自分の皮膚からいくつもの針が抜ける光景は想像以上に不気味で感触も気味が悪くて、意図せずとも涙が零れ落ちる。


「消毒するよ」


数え切れない傷跡の上に消毒液が染み込んだガーゼを当てられただけで、もう言葉では形容しきれない程の痛みが身体中を駆け巡り。


「姉ちゃん、俺この辺りの画鋲抜くから、ここガーゼで押さえてて」


父に怒られないように枕を口元に当てて悶える私を一瞥した岳は、冷静を装ってそう指示してきた。


「っ、」


痛くて、辛くて、苦しくて。


画鋲を抜いて消毒し、家にある絆創膏を総動員して極めて傷の深そうな場所に貼る。

それでも、傷口からの出血はなかなか止まる気配を見せてくれなかった。