彼の声が震えているあたり、画鋲が身体中に刺さった私の姿は想像以上に悲惨なものだったのかもしれない。


でも、幸運な事に、誰も予想していなかった私のこの状況が、家中を吹き荒れていた嵐を鎮めるきっかけになったんだ。


私が痛みで呻いている間、

「俺に楯突いたらどうなるか、分からせてやるよ」

次はもうない、と言わんばかりの捨て台詞を吐いた父の声が頭上から聞こえた気がして。


痛みに耐え切った私が目を開けた時には、もう鬼の姿はリビングから消え失せていた。



「っ、…ごめんね、岳。身体、痛くない?」


恐る恐る周りを確認した私は、自分の傍にしゃがみ込む岳の姿を捉えた。

守ってあげられなくて、痛い思いをさせてしまってごめんね。

小さな声で謝れば、

「何言ってんの、俺の事より自分の心配してよ!母さん、絆創膏どこにある!?あと消毒液も!」

その何倍もの大声で制圧されてしまった。


確かに、弟との比ではない怪我をしてしまった私にそんな事を言われても、説得力がないに決まっている。


「あ、…ああ!すぐ持ってくるわね」


今になってようやく我に返った母が、小走りにリビングを出て行ったのが分かった。