手を伸ばせば、瑠璃色の月



それからすぐ、高級住宅街に入った車の窓から自分の家を見つけた私は、美陽に感謝の気持ちを伝えようと口を開いた。


「今日は本当にありが…っ、」


なのに、その言葉は不自然なところで途切れてしまう。

何故なら、私の双眸は、自分の家の敷地内に見覚えのあるシルバーの外車が停まっているのを捉えてしまったから。


悲鳴にも近い声が漏れ、膝に乗せたリュックを掴む手に力がこもる。


「どうしたの?」


そんな私に気づかずに駐車の指示を出していた美陽がこちらを向き、怪訝そうに首を傾げた。



見間違えるはずもない、あの車は父のものだ。

いつもは帰宅するのが夜だから気を抜いていたけれど、どうしてこんな早くに帰って来ているの。

頑固で気が短い父曰く、一家の大黒柱である自分が帰宅する際には家族全員が揃っていなければいけないらしい。

だから今、家に私の姿がない事を知った父が激怒しているのは目に見えている。


洋風な造りで、誰もが羨む三階建ての大きな一軒家。

その中でどんなに恐ろしい嵐が吹き荒れているかと考えただけで、吐きそうになった。


…でも、それでも。


「ううん、何でもない!気のせいだった」


母と弟に与えられる罰を軽くする為にも、帰らなければいけない。

これも全部、私のせいなのだから。