手を伸ばせば、瑠璃色の月

…こんな風に、いつまでも笑顔でいれたらいいのに。

頬が痛くなるくらい、笑い転げられたらいいのに。


車内でのひと時が限りなく幸せで、いっその事なら美陽の家で暮らしたいとまで考えそうになる。


「貴方はそういうところは鈍感なんだから、何かあったらいつでも言いなさいね。話くらいは聞いてあげるから」

「うん。…えっ?」


でも、そんな甘んじた考えは彼女の一言で一掃された。


「何よ」

「あ、ううん。ありがとう、何かあったら言うね」

「夢と現実の区別すらつかないんだもの。心配しかないわ」


容姿も服装も、どこからどう見ても筋金入りのお金持ちの彼女の紡ぐサバサバした言葉の中には、隠し切れない心配の色が含まれていた。


彼女の心のパレットにあってはならない色を生み出したのは私。

保健室での二人の会話が頭の中で再生されて、一瞬で後悔の念が押し寄せる。


私が助けを求めたら、その分の罰を受ける人がいる。

それに、もし魔の手が弟にも向かい、彼の太陽のような笑顔が一瞬で血塗られるのを見てしまったら、

…きっと私は、理性を保っていられない。


答えを出すのが難しい事ではなかったからこそ、根拠のない返事をしてその場をやり過ごした。