闇と同じ色の服、頭はフードに覆われていて、顔も黒マスクで遮られている。

黒い手袋に覆われた両手は、いつだったか、父が酔った時に気前よく購入してくれたブランドもののネックレスを掴んでいた。

動きやすそうな服装から垣間見える筋肉質な体型と少し背の高い身長からして、この人は男性だと思う。



そして、そんな中でもはっきりと捉えることが出来た、2つの鋭い眼光。


「っ…、」


ああ、今になってようやく脳がこの緊急事態を処理し始めたのを感じる。

この人は、誰がどう見ても私のネックレスを盗もうとしている不審者であり、泥棒だ。



ひゅっと、息を飲んだ。

でもこれは、見知らぬ泥棒に対する恐怖心とかそういう類のものではなくて。


「ぁ、…」



綺麗、だったんだ。


驚きと威嚇の2つの意味が込められた彼の左目は、海を吸い取ったかのような美しい瑠璃色をしていた。


オッドアイ、というやつだろうか。

その人の右目は漆黒なのに、左目は吸い込まれそうな碧色。


何をしでかすか分からない侵入者の事を、肘をついて身体を起き上がらせた中途半端な姿勢で見つめる私は、まさに蛇に睨まれた蛙状態なのに。

それなのに、暗闇に紛れても尚宝石のように美しく輝き続ける左目に、目を奪われていた。