手を伸ばせば、瑠璃色の月

やっぱりそうだよね。

小声で繰り広げられる二人の会話に耳を傾けていた私は、もう一度枕に頭をつけて小さく息を吐いた。


彼らはやはり、私が何かを抱えているなんて思ってもいない。

朔だって、明日になれば今日の出来事なんて忘れてしまうんだろう。


信頼出来る友達である二人との間に壁を作っているつもりはさらさらないけれど、二人に心配をかけたり余計な負担をかける事だけは避けたかった。



だから、私は今日も嘘をつく。



「私、知世の事起こすわ。貴方、知世と一緒に帰るの?」

「ううん、もうちょっとここでゆっくりする」

「そう」


徐々に、美陽のものと思われる足音が近付いてきた。

起きていると悟られたくなくて、ぎゅっと目を瞑って狸寝入りをする。


シャーッとカーテンが開いた音がして、何も見えない視界の中の景色が陰ったのが分かった。


「知世、そろそろ起きなさい。もう放課後よ」


美陽の声は、家で聞こえる誰のものよりも温かい。

優しく私を揺する手の感触も、それが父だったらどんなに幸せかと思いを馳せてしまう程で。


「…んっ、放課後…?」


タイミングを見計らった私は、あたかも今起きました、と言いたげに目を擦る。


「帰るわよ。迎えの車が来てるから、送ってあげるわ」


目を開けた先に映るのは、優しく微笑む美陽の姿。


ありがとう。

そう声に出した私は、嘘で固めた口角をふわりと引き上げた。