手を伸ばせば、瑠璃色の月








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「──────の……は、───?」

「─────。でも、……た」


闇と沈黙の世界に閉じ込められていた私の耳に、微かに誰かの話し声が聞こえてきた。


ゆっくりと寝返りを打てば、触り慣れない柵に腕がぶつかる。


…あれ、ここどこだっけ。

半強制的に目をこじ開けると、そこに映るのは保健室の天井。


ああそうだ、私、朔に言われてベッドで寝ていたんだっけ。

それにしては良く寝た気がする。


とろんとしていた頭が活動を開始し、すぐに状況を把握し直す。


もう授業は終わったかな、早く戻らないと。

そんな事を考えた私が、ベッド脇の柵に手をかけて上半身だけを起き上がらせたその時だった。



「それで、貴方は授業を放棄して今の今まで漫画を読んでいたのね?」

「うん、4巻まで読み切っちゃったあ」


閉め切られたカーテンの向こう側から、呆れ返ったような美陽と開き直った朔の声が聞こえてきたんだ。


「ええ、そりゃあ放課後までの二時間でそれくらいは読めるでしょうね」

「凄いでしょ。今日さ、病院に遊びに行ってこの続きでも読もうかなと思って」


…ん?放課後?

静かに二人の会話を盗み聞きしていた私は、美陽が発した一言に目を見開いた。


だって、私は五時間目が終わる頃に起こして欲しいと頼んだはずなんだ。