瞬間、

「っ、」

何かを言おうとして口を開いた美陽が、喉に蓋がされたかのように押し黙った。

言葉を紡ごうと唇を動かしても、そこから漏れ出るのは微かな吐息。

言葉の代わりに身振り手振りで心情を伝えようとするも、彼女の両手はただ上下に振れるだけで何の意味もなさない。


そんな彼女と焦る私の様子を見守っていた朔の顔が、次第に笑いを堪えきれずに歪んでいき。


「貴方、どうして悪党と話してるのよ!どういう事なの!?」

「ふふっ、2人の顔ツボすぎ…!」


結局、私は温度の異なる2人から大声と笑い声を浴びせられる羽目になったんだ。



「あのね、違うの。これには色々と訳があって」


慌てて両手を振り回した私が全てを話し終えたのは、HRが近付いて担任が教室に入ってきた直後の事だった。

最初こそ、泥棒さんとの出来事を夢だと思い込んでいた私が、勘違いをしたまま話し続けていたこと。

彼が再度忍び込んだ時にこれが現実だと言及し、その上で警察には通報しないと伝えたこと。


…そしてつい先日、彼と共にプラネタリウムを観に行ったこと。


「プラネタリウム?…今の説明で悪党が悪い人ではないと分かったけれど、それでも2人で外出なんて、貴方の行動力には脱帽だわ」