「何ですって?泥棒が実在した!?」

「しーっ、もうちょっと静かに…!」


週が明けた月曜日の朝、泥棒関連の出来事が現実だと明かした私に浴びせられたのは、混乱した美陽の大声だった。


「静かになんて出来るわけないでしょう!その悪党は何回貴方の家に侵入したの!?」


彼女の眼力がいつにも増して鋭くて、怯みそうになる。

「えーっと、…3回」

「有り得ないわ」


いつものお嬢様らしい言動は何処へやら、私の目の前の席に座った彼女は髪の毛を掻きむしった。

確かに、あんな非現実的な出来事が現実だと言われたら取り乱すのも分からなくない。

それに、2度目に蓮弥さんが私の家に現れた際、私はそれを嬉々として美陽に伝えたのだから。


「…取り敢えず、警察に通報して悪党が逮捕されたって認識で良いわね?盗られたものは?」

「あー、ネックレス、盗まれたんだけど返されて、」

「意味が分からないわ。とにかく警察は?」

「警察は、」


美陽からのじとりとした目線が、蛇のように私の身体にまとわりつく。

そこで、何話してるのー、と、のほほんとした顔で会話に乱入してきた朔の方を見やった私は、そのままの姿勢で口を開いた。


「話したら良い人みたいだったから、…呼んでません」