手を伸ばせば、瑠璃色の月

「ごめ」

「姉ちゃんなら、今日は友達とプラネタリウム行ってきたって。ねぇ?」


けれど、幸か不幸か、震えた声は弟の優しい声に掻き消された。


「誰と?」

「っ、3軒隣に住む美陽と、総合病院の跡継ぎの朔です」


瞬時に質問の意味を理解した私は、今度こそ自信を持って口を開いた。

もう、これが嘘か本当かなんてどうでも良くて。


「昼は?」

「3人でスパゲッティとピザを食べました」

「金の無駄遣いはしてないだろうな」

「はい」

「そうか」


たったそれだけの、短い会話。

それでも、私の心には新たに消えることのない傷が生まれていく。


一緒にプラネタリウムに行った人も、食べたものも違う。

ここが俗に言う“普通”の家庭だったとしても、私は蓮弥さんの存在を隠すかもしれない。

けれど、プラネタリウムの感想くらいは言えていたはずで。


星が本当に綺麗だったとか、星座の話とか、宇宙に関する神話とか。

皆と共有したい“綺麗”は、私の中で燃えて灰になる。


そうして、私は再び“綺麗”が何か分からなくなっていくのだろう。



「おい、お前これ何入れた?味が薄いじゃねえか!」

「ごめんなさい。醤油、持ってきますね」

「今からじゃ遅せぇんだよ!」


意識を戻せば卓上で飛び交う罵声、父の大声にビクついて箸を取り落とす岳。