岳に教えてあげようかと思ったけれど、彼が結婚をしないと明言していた事を不意に思い出して胸が痛くなる。

私だって将来の設計図は描けていないし、…もしかしたら、私が自らこの言葉を言う機会は与えられないのかもしれない。


でも、いつか。


『続いて、夏の夜空を見てみましょう。夏と言えばこと座のペガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブを結んだ夏の大三角が有名ですね』


ナレーションの説明を聞きながら、

いつか、誰かと一緒に月を見上げて”綺麗だね”と言い合う未来が来れば良いな、なんて、思ってしまった。






「いやー、想像以上に迫力あったな」

「あんなに満天の夜空、見たことなくて…。凄く感動しました」


それから、時間は瞬く間に過ぎ去って。

春夏秋冬、季節によって雰囲気を変える夜空を眺め、星にまつわる神話を聞いてすぐにプラネタリウムは上映終了を迎えた。


一気に明るくなった視界の中、蓮弥さんは瞬きを忘れてプラネタリウムを見ていたのか、しきりに目元を擦っている。


「だから言ったろ、綺麗だって」


目元を擦りすぎて二重幅がおかしくなったのか、変なところに新たな線をつけた蓮弥さんと私の目がかち合う。

確かに、彼の言葉は首尾一貫して的を射ていた。


「はい。ありがとうございます」


本日何度目かになる感謝の気持ちを伝えれば、伸びをしていた彼は唇に薄く弧を描いた。