「ん?そういや……」
彼女と再び別れた後、俺は大事なことに気づいた。
それは、俺が一度も1年前のことを覚えていると口にしなかったこと。
何やってんだか。
「でも、まぁいいか」
もう見ているだけじゃない。
俺と彼女には次の約束があるから。
昼休み──。
約束どおり彼女に好きな飲み物を選んでもらい、静かに話せる場所へと移動した。
そこであの日、下駄箱に話しかける宮崎さんを見たことを話すと、彼女は真っ赤になって「昨日と同じくらい恥ずかしいです」と言って笑った。
俺達にはまだ互いに知らないことがある。
それは、同じ日に惹かれ合っていたということ。
その事実を知るのは俺が1週間後、彼女に『好き』だと伝えた時──。
fin.



