体が震え、立っているのがやっと。体を壁で支えていなければ、今すぐ倒れてしまいそうだった。

世界に名を馳せる一流ホテルの次期社長が、一般人の美織を本気で相手にするはずはない。彼の言葉は本心から出たものなのだろう。
全部、美織の勘違いだった。自意識過剰も甚だしい。

あれだけ彩に満ち溢れていた景色が、唐突に色を失くしていく。

灰色に染まった世界の中に突然放り出された美織は、そこから立ち去る以外に手立てがなかった。

わずか三カ月間。幸せな世界はガラガラと音を立てて崩れていった。