気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】

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『恋をするとすべてが色づいて見える』


高校生のとき、友人がうっとりするような表情で言っていたのを思い出した。

ビルの隙間から見える空の美しさ、道端にひっそり咲いている花の力強さ。これまで気にもかけなかった景色の一つひとつに意味があるように思える。

当時、理解に苦しんだ表現は、今の美織ならよくわかる。憂鬱なはずの雨音がピアノの調べに聞こえたり、名も知らない花を見て綺麗だと思ったり、恋愛のおかげで生まれた心の余裕が目に映る景色を優しいものに変える。

史哉が帰国して二カ月、交際が順調なのは言うまでもない。
人生バラ色。
決して大袈裟ではなく、そんな心境で毎日が過ぎていたある日の午後、美織は急な吐き気をもよおし、クラスティのバックルームにあるトイレに駆け込んだ。

お昼に食べた生クリームたっぷりのカルボナーラが胃にもたれたのか、ムカつきを押さえきれなかった。

(胃腸の弱さなんて、これまで感じたことなかったのに。私が気づいていないだけで、体調が悪いのかな)

不可解に思いながら個室を出ると、そこに由良がいた。