細めた目が突如として色香を放ちだす。テーブルに片方の肘を突き、手の上に顎を乗せて軽く首を傾げた史哉は美織をしっとりと見つめた。
声も出せず、頷くので精いっぱい。
椅子から立ち上がった史哉が、美織のもとへやって来る。膝の上に置いていた手を取り、美織を引き上げて立たせた。
「それじゃ遠慮はしない。バンクーバーで、帰国したら覚悟してと言ったのを覚えてる?」
「はい」
もちろん覚えている。
想いを伝え合い、彼の隣で目覚めた朝は、美織が生きてきた中でもっとも幸せな時間だった。史哉の言葉は全部、忘れるはずもない。
「朝まで離さない」
視線が間近で絡み合う。眼差しはすでに熱を帯び、強烈な色香をともなって美織の鼓動を乱れさせる。
「……明日の朝までじゃ足りません」
願いが叶うのなら、ずっと。
「もちろん、そのあとも離さない」
独占欲を孕んだ言葉はどこまでも甘い。ゆっくり近づいてきた唇が美織のそれを塞いだ――。



