「私たちは恋人と思っていいのでしょうか」
食事を終え、美織はふと感じた疑問を口にした。
「僕はそう思っていますが、美織は違う?」
「そうならいいなと思っていますが、史哉さんがなんとなく一線を引いているような気がして。私のほうが年下なのに未だに敬語ですし」
どちらかというと美織が一方的に自分の話をするばかりで、彼自身のことは詳しく知らない。今一歩踏み込めない感じが史哉にはある。
付き合いたてのうえ、この一カ月は遠距離恋愛だったから無理もないのかもしれないが。
「自分を律していないと、美織に無様な姿を見せる気がしてね」
「無様?」
史哉が無様だなんてありえない。首を傾げて聞き返した。
「執着したり独占欲を露わにしたり。見苦しい姿を晒すかもしれない」
「……それは無様とは違います。どちらかというと嬉しい……」
「ありのままの姿を見せても?」



