ゴールデンウィークが明け、美織は気分も新たに出勤した。

インテリア雑貨を扱うショップ『クラスティ』が美織の職場である。祖父が作る琉球ガラスに魅せられ、働くならインテリアや食器に関わる企業でと入社した。
いつかこの店で祖父の作品を取り扱えたらいいなと淡い夢を抱いている。

商業ビルの一階にある白を基調とした青山店は、清潔感のある雰囲気を出しつつペンダントライトや壁に特殊な造作を施したアーティスティックな空間だ。
ハイセンスなブランドを集めた店内には、日常使いから特別な日のためのものまで幅広く扱っている。 


「バンクーバーはどうだった?」


出勤早々のバックルームで尋ねてきたのは、一年先輩の中根(なかね)由良(ゆら)だ。
ストレートロングの髪をひとつに束ね、くりっとした丸い目のかわいらしい顔立ちをしている。

一年目のときには美織の教育係としていろいろ教えてくれた、頼れる先輩である。


「とても楽しかったです」
「美織ちゃんのことだから、ナンパされまくって大変だったでしょう」
「いえっ、されまくってだなんて。でも、素敵な出会いならありました」