恋愛は初めてではないが、久しぶりの高揚感に史哉自身も戸惑っていた。

離したくない。このままずっと腕の中に――。

想いを持て余して彼女を抱きしめると、美織はゆっくり目を開けた。
史哉を認識して、途端に頬を染めて目を泳がせる。

恥じらう彼女の唇に自分のそれを重ねた。


「おはよう」
「……おはよう、ございます」


たどたどしい言い方が愛しくてたまらない。


「よく眠れました?」
「はい……。瀬那さんの腕の中、ドキドキするけどとても居心地がいいです」
「そういう言い方は男を惑わせるって知っておいたほうがいい」
「瀬那さんを惑わせられるなんて、私すごいですね」


目を細めていたずらっぽく笑う。

もはや史哉にとって、美織のやることなすことすべてが愛しい。たったの三日で、これほど心を乱される存在は初めてだ。