史哉の唐突な提案に驚き、美織は首を大きく横に振った。
「でも、ほかに泊まれるホテルがない以上、そうするしかないと思いますよ。知り合ったばかりの男の家に来るのは嫌でしょうが」
「嫌とかそういうのではなく……。そこまで瀬那さんによくしていただくなんて申し訳なくて」
スーツケースを引き寄せ、彼女が肩を小さく丸める。
「襲われるんじゃないかと心配ですか?」
「いえっ、瀬那さんがそんな人でないのはわかっていますから」
「それは残念。絶対に手出しできませんね」
大慌てで否定した美織の目が点になったため、ふっと笑みを零して続ける。
「冗談ですよ」
「も、もうっ、瀬那さん! 私をからかってばかり」
恨めしそうに史哉を見上げ、軽く唇を尖らせる。怒った顔もキュートだ。
「でも私をリラックスさせるためにそう言ってくださっているんですよね。気を使わせてばかりでごめんなさい」



