引き止める言葉は、爽やかな風に乗って見当違いのほうに流されてしまった。
そしてものの数分後、階段の隅で待機する美織のもとに史哉がにこやかな表情で戻る。
「瀬那さん、すみませんでした」
「これですよね? 中をたしかめてみてください」
急いで頭を下げつつ包みを受け取ろうと出した手が、意図せず彼の手に触れる。ドキッとしてつい引っ込めると、史哉からクスッと笑みが漏れた気配がした。
きっと、たかだかそれだけでなにを意識しているのかと呆れたに違いない。
気を取りなおして包みを受け取り、中身をたしかめる。カナダ在住の画家が制作した、カラフルなトーテムポールのキーホルダー。これだ。
「ありがとうございます。今、お金を……」
バッグから取り出した財布を開けると、史哉はそれを制した。
「このくらい大丈夫ですよ。気にしないでください」
「そうはいきません」



