素敵な男性の甘い言葉は、恋愛に疎い美織にはとても危険だ。
気持ちをなんとか落ち着かせ、「お気遣いをありがとうございます」と澄まし顔で目礼を返した。
ここへきて、彼と一緒に過ごす一日を想像して緊張が走る。今さらもいいところだ。
「では行きましょうか」
史哉は右手を前に出して美織の足を促した。
「なにかリクエストはありますか?」
「昨日はギャスタウンとハーバーセンターへ行ったので、それ以外の場所がいいです」
ホテルのエントランスを横切りながら行き先の相談をする。
「バンクーバーは初めて?」
「はい。カナダ自体も初めてです」
「それじゃ、まずはモデルコースがいいかな」
史哉はひとり言のように呟きながらホテルの敷地を出て、「こっちへ行きましょう」と美織を左手へ誘導した。
平日にもかかわらず街には人の出がそこそこある。



