「ハハッ、俺のことはいいから陽向くんと三人で幸せな家庭を築いてよ」
「ありがとうございます」


碧唯は手にしていたワイングラスを高く持ち上げ、乾杯の仕草をしてから離れていった。
彼が去るタイミングを見計らって近づいてきたのは、渚と萌花だ。


「美織さーん、ほんっとに素敵ね」
「みおちゃん、かわいい」


純白のウエディングドレスを身に纏った美織をうっとりした目で眺める。
フロント部分はシンプルだが、バックにフリルのついたリボンがあしらわれ、メリハリのあるシルエットになっている。曲線美を生かした大人っぽいドレスだ。


「ありがとうございます」
「瀬那さんもとても素敵よ」


渚の言うように、今日の史哉は一段と男ぶりが増している。
光沢のあるグレーのタキシードは襟元、ベスト、ネクタイと濃淡の違う色味で仕立てられ、品がよくおしゃれ。いつにも増して美麗な空気を遠慮なく放ち、おかげで美織は彼を直視できないでいる。