五月下旬、ラ・ルーチェ沖縄の一大リゾートは祝福ムードに溢れていた。

昨日まで降っていた雨は嘘のようにあがり、雲ひとつない真っ青な空が眩しい。

世界に名を馳せる一流ホテルの社長のため、会長夫妻たっての希望で大規模な披露宴は秋に予定されているが、今日は親族と近しい人だけを集め、ふたりはチャペルで永遠の愛を誓ったばかり。青空の下で幸せムード満点の立食パーティーがスタートした。

看病がきっかけとなって東京で暮らすことを決意した美織は、その日のうちに史哉とふたりで祖父母に報告。ふたりは大いに賛成し、新たな門出を祝ってくれた。

陽向にいたっては、これからずっとパパと一緒にいられると知り大喜び。日付が変わっても寝つけないほどだった。

その二週間後、ふたりは史哉のマンションへ引っ越しを済ませ、新生活をスタートさせている。工房はまだ準備段階だが、間もなく使えるようになる。

一人前にタキシードを着た陽向の手を引きながら、史哉の両親や美織の祖父母と言葉を交わし、ほかに親族たちが入れ代わり立ち代わり親族が三人の元へやって来る。

その中には初めて会う史哉の弟、碧唯の姿もあった。
赴任先のイタリアから駆けつけてくれたのだ。