そこへシャワーを浴び終えた史哉が濡れた髪をタオルで拭いながら現れた。
病み上がりだからしっかり髪を乾かさなきゃだめなのにと、余計なことを考える。
『もしもーし? すみませーん』
「あっ」
女性の声に聞き覚えがあるのだろう。史哉はハッとしたようにモニターに向かって話しはじめた。
「笠原さん、すみません」
(私がいるのにいいの?)
素知らぬふりをして〝訪問先を間違えていますよ〟とでも言って誤魔化すのも可能なのに。
「今日はお引き取り願えませんか?」
『ご都合が悪いんですね。かしこまりました。ではまたよろしくお願いします』
女性はやけに丁寧口調でペコッと頭を下げ、あっさり引き下がった。
ふたりのやり取りに茫然とする。
「……追い返してよかったんですか?」
「いつも来てるハウスキーパーさんだから、キャンセルはいくらでも平気だよ」



