大急ぎでやって来た東京は、海開きが近い沖縄との気温差を実感する。夜遅い時間のせいもあるが、ちょうど寒の戻りがあったらしく羽田空港から乗った電車の乗客たちは厚手のコートを着ていた。
沖縄で暮らしているとコートをあまり必要としないため、美織はうっかり薄手の上着で来てしまった。慌てていたとはいえ迂闊だ。
自分まで風邪をひくわけにはいかないと駅の売店でカイロを買い、背中に貼って彼のマンションを目指した。
美織が東京へ来るときには常に史哉が一緒だったため、マンションにひとりで訪れるのは初めて。入籍後に一度挨拶をしたコンシェルジュの前を緊張の面持ちで通り、セキュリティを抜けていく。
念のためにもらったスペアキーがこんなふうにして役立つとは思いもしなかった。
「おじゃまします……」
小さく挨拶をして入った室内にはしんとした静けさが満ちている。リビングもダイニングも明かりが落とされていたため、足を忍ばせて二階へ向かった。
彼の寝室をそっと開けると、薄暗闇の中から寝息が聞こえてきた。
起こさないように静かに近づき、ベッドサイドに跪く。二週間ぶりに見る史哉の顔に胸が高鳴った。
こんな状況でドキドキしている場合ではないが、寝顔まで美しい彼が悪いと罪をなすりつける。
気を取りなおし、手を伸ばして触れた額が熱い。



