史哉と入籍をして瀬那美織になって早二カ月。工房ゆくるには、変わらない時間が流れている。
沖縄は本州に先駆けて初夏を迎え、海開きまであと少しだ。

沖縄のリゾート建設は佳境に入ったものの、史哉の抱える仕事はそれだけに留まらず多岐に渡るため、毎週末会えるとも限らない生活が続いている。
それでも毎日連絡は欠かさず、ビデオ通話で陽向の顔を見せられるのはありがたい。

先日は、現代の若きホテル王としてインタビューを受ける史哉をテレビ番組で見た。その麗しく精悍な姿は美織のみならず、その場にいる女子アナウンサーまでも虜にしていた。彼を熱く見つめる目に、テレビを見ながらやきもきさせられた。


「おじいちゃん、これで全部かな」


工房内に並んだ段ボールの中身は、すべてリゾートホテル用の食器である。ここ数カ月かけて作り上げた、辰雄の渾身の作品たちだ。
手伝った美織もうっとりするほど力作であり、どれも自信を持って提供できる。


「そうだな。やっと揃ったな」


やれやれといった仕草で腰を伸ばしていると、祖母の悦子がグラスに麦茶を入れて現れた。