「ようやく寝たよ」
ホッとした顔でリビングに現れた史哉は、どこか誇らしげだ。一緒にお風呂に入り、歯を磨かせて寝かせるという一連の父親業を初体験した充足感だろうか。
ソファに座る美織の隣に腰を下ろし、深く息を吐いた。
「初めての寝かしつけはどうでしたか?」
「絵本を四回も読ませられるとは思わなかったな」
沖縄から持参したのは、お気に入りのさるかに合戦である。
「あのお話、大好きなんです。でも、私でも四回も連続では読んだことがないので、史哉さんの読み聞かせが上手だったんだと思います」
「まぁそれなら自信はあるかな。小学生のときに朗読が上手だって先生に褒められたから」
「筋金入りですね」
胸を張っておどける史哉を見て笑いが込み上げる。
「疲れたでしょうからお茶でも淹れますか」
立ち上がりかけた美織の手を史哉が掴んだ。



