しまいには美織の制止を振り切ってバスタブから上がり、ドアを開けてめいっぱい大きな声で叫んだ。
「パパー! パパー!」
「ちょっ、陽向」
美織が腰を浮かせて思い留まらせようとしたそのとき――。
パウダールームのドアが開く音がしたため、慌ててお湯に浸かって身をひそめる。
「陽向、どうした? 大丈夫か?」
史哉はお風呂でなにか起こったのかと心配で駆けつけたのだろう。「ママは?」と声を上ずらせた。
「だ、大丈夫です。なんでもないです」
バスルームから美織が答える。
「なんだ、よかった。美織がお風呂で倒れたのかと思った」
「お騒がせしてごめんなさい」
史哉の気配はしても、気を使っているようでパウダールームに足を踏み入れてはいない。



