史哉は食器棚からあるものを取り出し、美織の前に差し出した。
「あっ、これ……。まだ持っていてくれたんですか」
「あたり前だよ」
バンクーバーで美織が史哉にお礼と称してプレゼントしたマグカップだった。
「今でも愛用してる。今度三人でお揃いのカップを買いにいこうか」
「ぜひ!」
小さな約束がうれしい。それもすべて家族になったから共有できるのだと実感する。
マンションのすべてを案内されたあと、美織と陽向はふたりでバスルームに向かった。
大理石の洗面カウンターは床や壁と同じくライトグレーで統一され、バスルームとの間仕切りにはガラスが使われている。丸見えで恥ずかしいと思ったら、必要に応じてロールスクリーンを下ろして視線を遮ることもできるみたいだ。
「ひろいねぇ、ママ」
「ふたりで入っても、まだ余裕があるものね」



