史哉は知らされていなかったようで、目をまたたかせて父親を見た。
「フライングしてすまないね」
頭を掻いて照れ笑いを浮かべる。
工房でどことなく覚えた既視感の理由が今わかった。目元が史哉に似ているのだ。
「遅くなりましたが、史哉の父の浩一郎です。こっちは」
「母の春子です」
父親に続いて母親が名乗る。「よろしくね」と揃って目尻に皺を寄せた。
美織も慌てて「よろしくお願いします」と頭を下げ、陽向も「よろします!」と真似た。
「それにしても父さんはせっかちが過ぎる」
「さんざん待たされたんだ、仕方がない」
「そうよ、史哉。早く連れてきてくれないんだもの。つれない息子でしょう? 美織さん」
不意に意見を求められ、「あっ、いえ、その……」としどろもどろになる。なんと答えるのが正解かわからないが、自分たちが歓迎されているのが伝わってきてうれしさが込み上げる。強張っていた体から、ふっと力が抜けていった。



