「まぁまぁ、かわいらしい!」
史哉の母親が陽向の元にやって来る。ゆったりとした足取りにも気品があり、立ち居振る舞いが優雅だ。陽向に目線を合わせ、その場に屈んだ。
パーマをかけたショートカットの髪はシルバーグレーだが、目鼻立ちがはっきりとし、肌には張り艶があって若々しい。なによりやわらかな雰囲気にホッとする。
「遠くからよく来たね」
「本日はお時間を取ってくださりありがとうござい……」
声をかけてきた父親の顔を改めて見た美織は、すべてを言い終えずに尻すぼみになった。
「あの、もしかして……」
見覚えのある人物だったのだ。ほんの数日前、美織がひとりでいるときに工房を訪れた紳士だ。美織の琉球グラス談義に興味を示してくれたうえ、案内したギャラリーでペアグラスを買ってくれた。
「あのときはどうもありがとう。とても楽しい時間だったよ」
「ちょっと待って、父さん。美織と会ったの?」
「バレてしまっては仕方がない。史哉がなかなか会わせてくれないものだから、工房を訪ねたんだ」



