「そうは言っても」
これが硬直せずにいられるものか。
ふたりの警備員の間をすり抜けていくとき、目深に被った帽子の下から美織をじっと見つめる視線を感じて背筋が伸びる。〝私は不審者じゃありません〟とアピールしたつもりだが、史哉の車に乗っている時点で彼らはわかりきっているだろう。
広い敷地に乗り入れた車がいよいよ停車する。目の前に大きなアンモナイトのようなシェル型の外観が現れた。
閉鎖的かと思いきや外壁に間口の広い窓が配され、柔らかな曲線を描いている。
美織たちの訪問に気づいたのだろう。玄関のドアが開き、六十代くらいのふくよかな女性がアプローチを歩いてきた。
(お義母様かな……)
トクトクと鼓動が早歩きをはじめる。助手席に呑気に座ったままではいられないと、急いで降り立った。
「は、初めまして、夏川美織と申します」
勢いよく頭を下げて自己紹介する。もっとしなやかに大人の女性らしく挨拶しようとしたのに、これではあわてんぼう丸出しだ。



