年が明け、史哉にプロポーズされてからおよそ一カ月が経過した。

ラ・ルーチェが恩納村で展開しているリゾートの工事は順調に進んでいる。相変わらず忙しい彼は東京と沖縄を往復する日々を送っており、美織たちの生活自体に変化はない。
近いうちに東京で史哉の両親に会い、入籍する予定になっている。

陽向は史哉をすっかりパパと認識し、東京からやって来るとずっとべったり。彼から離れようとしない。
幼くて理解できなかったからか、これまで父親の存在を尋ねられたことは一度もなかったが、深層心理では求めていたのかもしれない。

リゾートのレストランで使う食器の受注を受け、工房も大忙しだ。何度か本社からインテリアの担当者が訪れ、食器デザインや数量の打ち合わせがあった。

そうして慌ただしく過ぎていく毎日は以前と変わらないのに、史哉の存在を近くに感じられるだけで満ち足りた気持ちになるから不思議だ。晴れやかな心は、冬の澄んだ空にも負けない。


「そろそろこっちは出してもいいかな」


美織は、徐冷炉の中でじっくりと冷ましたガラス製品を注意深く取り出した。
暖色系の淡いグラデーションになったグラスは、色合いも形も計算通り。セレクトショップのコレッタから受けた注文の品である。