「彼女を自宅までお願いします」
運転手に託し、走っていく車を見送った。
平日のオフィス街は車も人も忙しなく行き過ぎていく。普段は車での移動が多いため、そんな中を歩くのは久しぶりだ。
仕事を離れてふと思い出すのは、いつでも美織や陽向の顔。遠く離れているからなのか、それともこの手にできていない焦燥感なのか、余計に恋しい。
週末に沖縄に行くと伝えておこうとスマートフォンを取り出した。
ながらスマホはスマートでないとわかっているが、メッセージアプリを開き、彼女とのトークルームに入力して送信する。ほどなくして既読がついたためそのまま待つが、画面は静まり返ったまま一向に返信がない。
いつもの美織なら、相手が警戒中の史哉であっても既読スルーはしない。
(吹きガラスの作業中なのかもしれないな)
たまたま史哉からのメッセージに気づいてタップしたが、リプライする余裕はないのだろう。それならば電話をかけて邪魔できない。
史哉はあきらめてスマートフォンをポケットにしまった。



