「叔父が先走って進めてしまい申し訳ありませんでした。僕には好きな女性がいるんです」
「好きな、女性が?」
「ええ。今日はそのお話をするいい機会だと思ってここへ来ました。池内社長にも改めて僕からお断りの連絡をいたします」
政次に悪気はないのはわかっているが、またすぐに次の話を持ち掛けてくるのは目に見えている。なるべく早いうちに彼にも美織の話をしたほうがいいだろう。
そう考えながら茫然とした彼女を伴って店を出た。
待たせておいた史哉専属の車から運転手が降り立つ。後部座席のドアを開け、史哉たちが乗り込むのを待った。
「紀香さん、この度は叔父が勝手にしたこととはいえ不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした」
彼女に向かい合い腰を折る。通行人たちがチラチラと視線を投げかけては通り過ぎていく。
フィーリングが合わないのはともかく、紀香が悪いわけではない。どちかといえば、美織を捕まえられていない史哉の落ち度が発端であるといってもいい。
「や、やめてください。私が惨めになりますから」
頭を下げた史哉を慌てて制す。



