気高きホテル王は最上愛でママとベビーを絡めとる【極上四天王シリーズ】


もともとここへは半年ほど前に傘下に収めたホテル、ソラスティの社長である池内と来るはずだった。今後の経営計画について相談したいと連絡があり、ランチを兼ねた打ち合わせをセッティングしたのだ。

しかし約束の時間に現れたのは彼の娘、紀香だった。父親は急遽都合が悪くなったため、自分が代役を務めると。せっかく予約したフレンチを無駄にしたくないと、食事を強行されてしまった。

二十七歳の彼女は大学を卒業してから社会人としての経験がない。そんな人間と経営についての話などできるわけもなく、代役にはなりようがない。史哉と娘の結婚を望む池内の策略だとすぐに気づいた。

彼には何度となく紀香を含めた食事に連れ出されてきたが、史哉が結婚話に首を縦に振らないため強硬手段をとったのだろう。
ふたりきりで食事をすれば、少しは距離が縮まるとでも考えたか。だとすれば、それはとんだ誤算だ。史哉には心に決めた相手がいるのだから。

大勢の人が行き交う本社ビルで事を荒立てるわけにはいかず、ほくほく顔の政次に見送られ、ひとまず穏便にここへやって来たのはいいが――。


「史哉さん、今度のお休みにふたりでどこかに出かけませんか?」


ようやくデザートプレートを空にし、紀香がナフキンで口元を拭う。