方々から寄せられる見合い話をことごとく断ってきたため、政次もここらでそろそろ決めてほしいと、紀香の父親と一緒になって推し進めようとしている。
自身に子どもがおらず、後継者を心配しているためだとわかっているが、正直辟易していた。
『ふふ、そうでしょうか。とってもうれしい』
政次のヨイショに頬を染めながら紀香がそれとなく史哉の腕に絡みつくが、やんわりとその手を外す。
『婚約パーティーの準備もそろそろ念頭に置いたほうがよさそうだ』
『大勢の方の前でお披露目なんてどうしましょう』
紀香は口元に手を添えるが、困っているようには見えない。むしろうれしくて仕方がないといった様子だ。
『紀香さんには、僕なんかよりもっと相応しい人間がいると思いますよ』
『まぁまぁ、そう謙遜しなくても。紀香さん、すみませんね。史哉はちょっと照れてるだけですから』
『大丈夫です。わかっていますから』
なにをどうわかっているのか。史哉の心が読めるのだとしたら、ふたりで食事になど行けないだろう。



