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史哉は高層階にあるレストランで向かい合って座る女性、池内紀香を一瞥して腕時計に視線を落とした。
ここへ来てからまもなく一時間が経過しようとしている。さっさと食べ終えて解放されたいと願う史哉とは裏腹に、目の前の紀香はデザートをゆっくりと口に運んでいた。
史哉のほうはコーヒーも即座に飲み終え、あとは席を立つだけというのに、ひと口で食べられる大きさのガトーショコラにちょっとずつフォークを入れる彼女に苛立ちを覚える。いくら清楚なお嬢様とはいえ、その大きさで味がするのか?と疑いたくなる。
同伴者の食べるスピードなど、穏やかな気質の普段の史哉であれば取るに足らない。しかしそんな些末なことで焦れるのにはワケがあった。
それは、ラ・ルーチェの本社を出たところで鉢合わせした副社長の瀬那政次――史哉の叔父とのやり取りである。
『おや? ふたりで仲良くお出かけかな? やはりこうして並んでいるのを見るとお似合いだ』
史哉を結婚させたい政次は、紀香との縁談をまとめたがっていた。
その理由というのも、大企業のトップに立つ人間が独身では外聞が悪いというだけのもの。〝この女性でなければならない〟というこだわりがあるわけではなく、とにかく史哉に妻の存在を作るのが目的なのだ。
史哉は高層階にあるレストランで向かい合って座る女性、池内紀香を一瞥して腕時計に視線を落とした。
ここへ来てからまもなく一時間が経過しようとしている。さっさと食べ終えて解放されたいと願う史哉とは裏腹に、目の前の紀香はデザートをゆっくりと口に運んでいた。
史哉のほうはコーヒーも即座に飲み終え、あとは席を立つだけというのに、ひと口で食べられる大きさのガトーショコラにちょっとずつフォークを入れる彼女に苛立ちを覚える。いくら清楚なお嬢様とはいえ、その大きさで味がするのか?と疑いたくなる。
同伴者の食べるスピードなど、穏やかな気質の普段の史哉であれば取るに足らない。しかしそんな些末なことで焦れるのにはワケがあった。
それは、ラ・ルーチェの本社を出たところで鉢合わせした副社長の瀬那政次――史哉の叔父とのやり取りである。
『おや? ふたりで仲良くお出かけかな? やはりこうして並んでいるのを見るとお似合いだ』
史哉を結婚させたい政次は、紀香との縁談をまとめたがっていた。
その理由というのも、大企業のトップに立つ人間が独身では外聞が悪いというだけのもの。〝この女性でなければならない〟というこだわりがあるわけではなく、とにかく史哉に妻の存在を作るのが目的なのだ。



