外に出た途端、抑え込んでいた感情が噴き出し、その場に立っていられなくなる。歩道の端に寄り、膝から崩れるようにしてしゃがみ込んだ。
(私はなにを浮かれていたの。史哉さんも私を好きかもしれないなんて。会えたら素直に気持ちを伝えようなんて……)
見当違いも甚だしい。彼の口からはっきりと遊びだという言葉を聞いたくせに。あの別れからなにも学んでいない自分が情けなくてたまらない。
再会後、史哉が美織に優しく接してきたのは陽向の母親だから。美織に対する愛なんてどこにもない。
水族館の帰りにアパートで美織を抱きしめたのは、きっとほんのきまぐれ。駄々漏れの美織の好意を目の当たりにして憐れになり、ちょっと情けをかけたのだろう。
史哉には婚約を控えた人がいる。その事実が、なによりの答えではないか。
彼はただ、陽向の父親としての役割を果たそうとしているだけ。実際に史哉からそう言われたのに、彼への想いが膨れ上がって見えなくなっていた。
自分に都合の悪いことから目を背けていたのだ。
先ほど見かけたお似合いのふたりの姿が目に焼きつき、胸をえぐられるような痛みに襲われる。
「あの、大丈夫ですか?」
通りがかった女性にかけられた声に「……はい」とか細く答え、なんとか立ち上がる。
急速に目元に集まった熱で視界が潤み、クリスマスムードに溢れる街が霞んで見えた。



