「じつは大切な書類を持参しておりまして、どなたかにお渡ししたいのですが」
「では、瀬那の秘書に連絡を入れてみます」
「ありがとうございます」
受付の女性は手元にある電話の受話器を上げ、早速話しはじめた。
カウンターから少し離れて待っていると、その女性が顔を上げる。
「念のため確認してみたのですが、瀬那はこの後、外出する予定になっているようでした。ただいま秘書の者が下りてまいりますので、そちらで少々お待ちくださいませ」
「ありがとうございました」
丁寧に頭を下げ、彼女に指し示された場所に向かう。そこには観葉植物で間を仕切った応接セットがいくつか並んでいた。ここでも簡単な打ち合わせができるように置かれたものかもしれない。
隅のソファに腰を下ろし、彼の秘書を待つ。
そうしている間にもたくさんの人がエレベーターから降り立ち、またべつの人たちが乗り込んでいく。大企業の本社とはこういうものかと新鮮な目で眺めていると……。
五つあるエレベーターのうちのひとつのドアが開き、そこから降り立った人物に目を奪われる。史哉だった。



