ここ数カ月はピタッとやんでいたが、最近また猛攻を仕掛けてきている。


碧唯(あおい)もまったくその気がないようだし、兄弟揃って独り身では瀬那家の今後が心配でならないな」


碧唯は史哉の四つ年下の弟である。外交官として働く彼は現在、イタリアに赴任中だ。
幼い頃から憧れていた外交官の職に就き、史哉とはべつのステージで世界を股にかけている。


「好きな女性ならいる」


会話が仕事から離れたため、口調がくだけた。


「ほぉ、お前に?」


意外とばかりに浩一郎が目を剥く。

三年前、父の側近に美織との関係性を探られたときに遊びだと軽く流したことがあるため、女性に本気になるような男ではないと考えていたのかもしれない。


「史哉からそんな言葉を聞く日がくるとは思いもしなかったな」
「じつは子どももいる」