日本から飛行機でおよそ九時間、豊かな自然が隣り合う大都市、カナダのバンクーバーは美織がいつか訪れてみたい街のひとつだった。

大学を卒業し、迎えた社会人二年目のゴールデンウィークに、美織はいよいよその土地に降り立った。

海外旅行は何度か経験しているが、ひとり旅は初めて。少しの不安と大きな期待を胸に空港から宿泊先のホテルへ直行し、無事にアーリーチェックインを済ませてから弾む心で街へ繰り出した。

午後二時過ぎのビルの合間から見える空は快晴。美織は半袖のシャツワンピの上にカーディガンを羽織っているが、街には早くもチューブトップやノースリーブの人がちらほらいる。試しに脱いでみたら、美織にはやはりちょっと肌寒かった。

ノスタルジックな雰囲気を醸し出しているギャスタウンは、ガイドブックによればバンクーバー発祥の地と言われる歴史街区らしい。

感性豊かなショップをゆっくり巡りつつ、メープルシロップやメープルバターなど、カナダならではのお土産を初日に無事ゲットした。帰りの空港で焦ってお土産を探すような心配事がなくなり、気分は晴れやかである。

そこからハーバーセンターに足を向け、展望台から三六〇度の大パノラマを堪能する。爽快な気分になったところで、少し早めの夕食にした。